PONという犬

数百年前にハンガリアン・プーリーと、他のハーディング犬をかけ合わせて生まれた犬がポンです。
生まれながらにしてハーディング本能に長けたこの犬種は1500年代に入ってスコットランドに紹介され、やがて現在のビアデッド・コリーの祖先となりました。


先祖

子孫

第一次大戦終結時に125頭の生存は認められたものの、その後の第二次世界大戦で激減。戦争終結時には繁殖に耐えうる犬がたったの8頭という現状でした。そこから全世界に広がっていき、現在のポンワールドが形成されていったのです。



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毛色
 
白/黒、白/グレー、白、黒、ベージュ、茶などの毛色がありますが、長いオーバーコートと柔らかくて密集したアンダーコートで形成されています。(温かい気候の日本ではアンダーコートがあまりない個体もいます)
面白いことに、ポンほどその一生涯において毛色が変わっていく犬もいないかもしれません。
例えば、黒で生まれて、数日後にブラウンになり、数ヵ月後にベージュになって、1年してグレーになるなんてことは珍しくありません。ここ数年グレーだなと思っていると、黒っぽくなってきたりと犬世界のカメレオンとも言えるでしょう。


どんなに経験のあるブリーダーでも、「子犬の将来の毛色は言い当てられない」といいます。

誕生直後 3日後 数ヵ月後 半年後 1年後 今後はグレー?
 

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ウォッチドッグ
 
PONはポーリッシュ・ローランド・シープドッグという名前からシープドッグ(牧羊犬)として知られていますが、ボーダーコリー等のように走り回って羊を集めてきたりする牧羊犬とは違います。羊の群れの中で、羊のフリをしながら辺りの様子を見ているタイプの「ウォッチ・ドッグ」なのです。いざ見知らぬ人間や、物が現れた時には飼い主に吠えてその存在を教えるように作られています。
そんなこともあって、ポンにはよく吠える傾向があります。

『ねえねえ、誰か来たよ!誰か来ちゃったよお〜!』
ママ、大変大変!大変だよ〜!
何が大変なのかわかりませんが、来客に大騒ぎする傾向があるので、都会生活の中ではその吠え方を矯正していくことが大事です。

「うちの子は何でこんなに吠えるの?」
という質問に答えは一つ。
「それはね、本能だから。」

また、これもウォッチドッグの本能からくるものなのでしょうが、PONは飼い主のことも「ウォッチ」します。
それこそ朝から晩まで、家中後追いをしながらウォッチするのです。やめて!と言っても駄目。鏡越しにでもウォッチする犬なんですから。


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犬種の標準体型とされているのがスタンダードというものです。※スタンダード参照

FCIの基準では牡♂45cm〜50cm・牝♀42cm〜47cmとありますが、実際のところ日本でも9キロから30キロまでとかなりの幅があります。(もちろんオデブちゃんかどうかは別にしてですよ。)

外見はとにかくずんぐりむっくりで、可愛らしい風貌が魅力の犬です。本場ポーランドではゴッシリ、ズッシリ、ドッシリといった四角く、筋肉質の骨太ちゃん作出に向いているようですが、ある意味まだまだスタンダードが定着していない犬種のようです。そいういう事もあり、ヨーロッパでは今後30年かけてFCIで決められたスタンダードに近づけていくそうです。

私たちが生きている間に日本でもスタンダードのPONを見ることが・・・できる・・・と思いたいですね。



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シッポ
 
羊の中で羊のフリをするからには尻尾は邪魔です。まあるいオシリでなくては羊に見えませんからね。
日本でも断尾をしますが、現在PONの断尾が許可されているのは本場ポーランドとアメリカと日本といったところで、ヨーロッパは1990年代より順次動物愛護の観点から禁止になっています。

生後数日で断尾されるので、自分達で繁殖をしない限りはイロイロな長さの尻尾を見ることが出来ません。
文献ではボブテイル(無尾)や短い尾や長い尾があるとありますが、実際本当に色んな形の尻尾で生まれてきます。
全く無い・短かい・短くて曲がっている・中くらいの長さ・中くらいの長さで曲がっている・長い・長くて曲がっているなど。 (曲がっているというのは折れているものも含みます)

この尻尾には遺伝的要素があるので、曲がった尻尾などはかなりの確率で遺伝します。
また、ボブテイルとボブテイルの交配は劣性遺伝で、生まれてくる子犬の数が少なくなるということです。

こんなことも既に断尾された子犬を貰ってくると知らなかったりして、面白くないですか?

いろんなシッポ 拡大画像


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ポンの特徴
 
ポンはすぐれた記憶力を持つ犬だといわれています。
確かに覚えが早いというか、変なところで抜群の記憶力を見せます。言いかえればしつこく覚えていて、根に持つという感じでしょうか。

2000年4月号の「愛犬の友」(誠文堂新光社)にPONの特集がありました。発売になった時、当時のPON飼いは先を争って購入したものです。自分達のPONを言い当てんばかりの記事は今でも私たちのバイブルになっています。もうバックナンバーもなく、新たに目にすることは出来ないので、編集部の方のご厚意で本文を引用させていただくことにしました。

■ポンの記憶力は素晴らしいです。良い意味でも悪い意味でもそう言えます。たとえば、あなたがポンに対して悪いことをしてしまったとします。その犬はそのことを一生忘れません。逆に友人が家を訪れてポンと会い、少し時間を過ごしたことにしましょう。その友人の事を決して忘れません。また人柄を見抜く能力に長けています。■
ね、怖いでしょ。人を見る執念深い犬なんです。

■また、大変勇敢な犬で常に飼い主を楽しませてくれます。その中のひとつに”にらめっこがあります。ある物が欲しい場合、座り込んでそれを貰うまでそのものをじっと見ています。■
ここでも特有の粘着質がわかります。
一般的に犬の集中力は数十分です。でもPONのこういうことに関しての集中力に時間の制限はありません。特に棚の上に大好きなボールがのっかていて、それを飼い主がくれない時・・・彼らは休むことなくひたすら棚の前で待つのです。昼になり・・・夕になり・・・夜になり・・・。飼い主が無理やり寝かしつけたとしましょう。朝起きたら必ず・・・その棚の前で座りますよ。ビックリです。
 
■ポンのもうひつとつの特徴は、実際に唇を後ろに引っ張って微笑むことができるということです。■
これは本当に驚きです。初めて自分のPONの笑いを見た飼い主さんが腰を抜かしたという話もあります。あえて形容するとしたらウシシシシ。実際本当に嬉しい時にやります。


次に「愛犬の友」にPONの欠点について書かれてありますのでご紹介しましょう。
■また性格は本当にいいのですが、頑固な一面はあります。すべてのポンのもう一つの名前は「ノー」なのではと思わせるほど頑固です。飼い主が犬のいたずらを見つけ、「ノー」といいますが、犬は「だから・・・?」という目で飼い主を見ます。■
確かに頑固な側面があり、頭がいいぶん自分勝手に判断して行動することがあります。

■最後の欠点は「泥棒」であることです。その辺においてあるカギ、時計、タオルなそがなくなってしますことがポンのいる家では日常茶飯事です。庭のどこかに埋めたり、小屋の中に隠したりします。その隠し場所はさまざまです。■
この泥棒というところが大きなPOINTです。
貧しい土地柄で生きながらえてきたPONは人間から食べる物を与えられることがありませんでした。畑の腐った作物を食い、その辺りに落ちているものを食いといったことで生きてきたのです。そのDNAが作用しているのか、家の中の食べ物をどんなに叱ったり訓練したりしても勝手に食べてしまう傾向があります。元来手先が器用な犬なので、机の上にあるラップをした皿の中の食べ物など簡単なのでしょう。全部平らげた後、わざわざラップをかけなおしていることもあります。食べかすを椅子の下に隠したりもするので、飼い主もかなり後になってから気づく場合もあるのです。



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食事
 
PONは太りやすい体質でもあります。
元々貧しい食生活で生きながらえてきたので、少ないカロリーで体を維持できるようプログラミングされているからです。ローカロリーで低タンパクなフードを、体の大きさの割りに「これだけしかあげてないの!?」と驚かれるような量で体重を維持できるのですから驚きです。


海外のブリーダーさんでは生後3ヶ月辺りで次第にパピーフードからアダルトフードに変えていくという人もいます。ひたすら他の犬種と同じようにパピーフードを与えているとブクブクになるからというのが理由ですが、日本でも痩せているPONはあまり見かけません。


厳しい食事管理をすると拾い食いや、家の中での泥棒が激しくなるので注意しましょう。
適度な運動と食事量を守って、長生きさせたいですね。


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運動
 
シープドッグだからかなりの運動量が必要なのでは?と思われがちですが、ウォッチドッグのPONが必要とする運動量は思いの他多くはありません。
とは言っても、広い場所で走らせたり、長い時間をかけて歩くといった運動は必要です。タフな犬なので、運動不足はすぐに体重増加を招くからです。
体のわりに手足の細い個体の場合には、体重管理をして運動させることも大切です。
「シープドッグだからフリスビー」「シープドッグだからアジリティー」などと思うと十字靭帯断裂や骨折を招きます。
しっかりとした筋肉を時間をかけてつけていくことが肝心なのです。


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社会性としつけ
 
PONというちょっと変わっていて面白い犬種を飼うに当たってのPOINTはこの「社会性としつけ」でしょう。
★子犬のうちから社会性を身につけさせる。
★服従訓練をおこたらない。
この2点をきちんとしておけば、最高のパートナードッグになります。
可愛らしいふわふわな外見と頑固な性格。相反した魅力を持つPONの飼い主は強い飼い主でなければならないのです。


最後に「愛犬の友」から・・・。
■現在ポンは室内犬に変わりつつあります。そして、その多くはアパートに住んでいます。柔軟性がありますので、狭い場所でも十分に生活することのできる犬です。でもヒマな時間を与えてはいけません。何かすることを与えなければ、自分で何かを見つけます。そしてそのほとんどはあなたにとって厄介なことばかりです。強い犬ですので、よく散歩してあげましょう。外に出て、さらに社会性を身につけていきましょう。■


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「愛犬の友」(誠文堂新光社)について


今回参考とさせていただいたのは、
2000年4月号です。
著作権の問題から、抜粋のみとなりました。
しかし、PONが社会性をつけるための方法などが詳しく書かれていて、本当に勉強になります。ぜひ一度読んでみたいと思われる方は事務局までご一報下さい。MAIL

尚、「愛犬の友」は
毎月25日発売。定価970円(税込)。
犬種特集や好評連載満載で、なんと
創刊55周年!です。